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水源 [本]

水源(アイン・ランド著)を読みました。

水源―The Fountainhead

水源―The Fountainhead

  • 作者: アイン・ランド
  • 出版社/メーカー: ビジネス社
  • 発売日: 2004/07/08
  • メディア: 単行本

NHKの実践ビジネス英語を普段聞いているのですが、その講師である杉田敏先生が何年か前のテキストに「アイン・ランドの本にとても影響を受けた」と書いてあるのを読みずっと読みたいなあと思っていました。

ちょっと古いデータですが、1998年のアメリカ出版社のランダムハウスが実施した20世紀の小説ベスト100の1位、2位、7位、8位をこのアイン・ランドの本が占め、2位にこの「水源」が入っています。(ちなみに1位は「肩をすくめるアトラス」)アメリカの教養ある人なら誰しもアイン・ランドの本を読んでいて、彼女のその本はいろんな人に影響を及ぼし、アイン・ランドを熱狂的に愛している人たちもかなりいるとのことです。

さて、1000ページ以上もある「水源」の感想ですが…。

久々の長編小説。まずは面白かったです。

建築家ハワード・ロークの信念を貫いた生き様を描く物語であり、そこには恋愛物語もあり(でもかなりロークとドミニクの恋は不可解でしたけれど)、ある種の思想が書かれていて、物語もいろんな展開をするので結構楽しく読み終えることができました。

自己中心主義者であるか、あるいはセコハン人間(セコンド・ハンド人間=中古人間)であるか?これが主要なテーマでもありました。

ロークは自分の信念を曲げずそのため、世間の風当たりをまともに受けてしまいうまく立ち回れません。大学は中退になり、師事した建築家ヘンリー・キャメロンはそのあまりの独創性を世間に認められずかなり落ち目です。それでもキャメロンに師事し続けます。そして友人キーティングの誘いにも乗らず、生活を安定させる道を歩みません。そして工事現場で働くようなこともします。でも最後には信念を貫いたおかげで、全てのものを手にするのです。彼が法廷で語っている言葉を借りれば、彼は自己中心主義者の仲間の部類に入る人間です。

一方、そんなロークに比べ、絶えず優等生で周りの期待どおりに行動し社会人になってからも大手の企業で成功を収めるピーター・キーティング。成功のためなら今まで付き合って自分が一番ホッとできるキャサリンとの結婚の約束も反故にし、突然言い寄ってきた美女のドミニクと電撃的に結婚もしてしまいます。従来あるものをうまく融合させることには長けていますが、オリジナリティがありません。いろんなところでオリジナリティあるロークの設計図を基本に使っては、自己流にまたアレンジしています。ルークはこういった人たちのことをセコハン人間(セコンド・ハンド人間=中古人間)と言っています。そして悲しいかなキーティングは最後には人生がうまくいかなくなっていきます。

「創造的仕事、たった一人で考え働く自己中心主義者に対し、誰かに依存し、強奪、搾取、支配を生むセコハン人間」「創造者が否定され、抑圧され、迫害され、搾取されつつも、前に前に進み自らの活力を人類に与え、進歩させてきたのに対し、セコハン人間は人類の進歩に何の貢献もしてきませんでした」…ロークは貧しい人たちのための公共住宅を作ることが夢であり、そのためならお金も要らない、しかし完全に自分の思い描いたもので作りたいという願っていました。しかしその公共住宅を作る話は当時成功を収めていたキーティングへと依頼が来ます。キーティングは低予算でそんな公共住宅を作ることができません。いつもゴージャスなお金をふんだんに使った建物を設計していたからです。そしてキーティングはロークにやらないかと話を持ち掛けます。ロークにしたら願ったり叶ったりです。無報酬でも引き受けたい仕事なのです。ロークはキーティングに約束させます。自分の設計に一切付け足したり削ったりしないこと。しかし、実際にはキーティングの事務所ではロークの設計に余計なものをつけてしまうのです。そしてその結果、自分の作品ではないものになってしまったと思ったロークはその建物に火をつけ燃やします。そして法廷に引っ張り出され、自己中心主義者とセコハン人間の功罪を述べるのです。

ロークと同じような生き方をしたのはロークが師事したキャメロンや彫刻家のスティーヴン・マロニーでした。彼らは、自己中心主義者たちでした。そして多くの人たちがセコハン人間でした。特にキャサリンの叔父であり、コラムニストのトゥーイは、オピニオンリーダーであり、ロークを社会的に抹殺しようと画策します。自己犠牲を推奨し利他主義を主張し、マスコミを使って人々を操作します。トゥーイ自身がセコハン人間の代表格でした。

訳者の藤森かよこ氏が「「水源」においては、奴隷を必要としない自由で独立した個人と、奴隷によって支えられる支配者という名の奴隷と、単なる奴隷が、数々の戦いを繰り広げる。「水源」とは、このような政治思想小説である」と言及しています。

一方、恋愛小説の部分では分かりにくかった部分がありました。ロークとドミニクの関係です。二人はお互いに好き同士にも関わらず、全然一緒になろうとせず、最後の最後にやっと一緒になりました。特にドミニクはロークが好きなのに、キーティングと衝撃的に結婚し、その後バナー新聞の社主のゲイル・ワイナンドのこちらも急な求婚に即座に応えてキーティングとの籍から抜いてすぐさまワイナンドとの籍を入れ、彼女の本心がどこにあるのか、全く良くわかりませんでした。謎の美貌の女性という感じ。それでも物語の展開としては色んなことが急展開して面白くはありましたが。

皆それぞれの胸の内にあるその信念なり、信条に沿って、好きに生きたらいいなあと思いました。ロークのように生きたければそれもあり、キーティングのように生きたければそれもあり。何でもアリだよ、と私は思いながら読み進めました。

長編なので時間をじっくりとれるときに読むのがお勧めです。


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村上春樹の本 何冊か [本]

ラオスにいったい何があるというんですか? 紀行文集

ラオスにいったい何があるというんですか? 紀行文集

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/11/21
  • メディア: 単行本

村上春樹の紀行文集。彼が暮らしたボストンでの野球のこと、マラソンのこと、ダンキンドーナッツのこと。アイスランドでのパフィン(鳥)、温泉、オーロラ、ガソリンスタンドにクレジットカードのこと。オレゴン州のポートランドとメイン州のポートランドのおいしい食事のこと。住んでいたギリシャのミコノス島とスペッツェス島への再訪のこと。ニューヨークのジャズクラブのこと。フィンランドでのカウリスマキの経営するバーと、シベリウスが過ごしたアイノラ荘のこと。ラオスのルアンプラバンのこと。イタリアのトスカナのワインのこと。熊本での漱石の家と万田坑とくまモンのこと。

特に本の題名になっている「ラオス(なんか)にいったい何があるんですか?」とベトナム人に質問されて、その答えのようなもの書いている筆者の答えが、とっても心に響きました。それは私も共感することだからです。

「…僕がラオスから持ち帰ったものといえば、ささやかな土産物のほかには、いくつかの光景の記憶だけだ。でもその風景には匂いがあり、音があり、肌触りがある。そこには特別な光があり、特別な風が吹いている。何かを口にする誰かの声が耳に残っている。そのときの心の震えが思い出せる。それがただの写真とは違うところだ。それらの風景はそこにしかなかったものとして、僕の中に立体として今も残っているし、これから先もけっこう鮮やかに残り続けるだろう。それらの風景が具体的に何かの役に立つことになるのか、ならないのか、それはまだわからない。結局のところたいした役には立たないまま、ただの思い出として終わってしまうのかもしれない。しかしそもそも、それが旅というものではないか。それが人生というものではないか」

どの紀行文も面白かったし、もともと彼の文章が好きなので何でもOKだったけれど、特にラオスの紀行文は時間の流れ方が違うためか、はたまた仏教国でたくさんのお坊さんたちの姿を目撃しているためか、思考が内に向かっていて、含蓄ある言葉がたくさんあってより惹かれました。旅は色んなことを見聞きし新しいことを発見していろんな気づきの場でもあるけれど、その気づきのようなものがこのラオスの紀行文にはたくさんあった感じがしました。それがとっても面白かったし、私にとってはこの本を読む意義みたいなものなんだなあと思いました。

まだまだ世界には知らない世界が広がっていて、私ももっと見てみたいなあと思いました。いつかまた出かけたいです。

職業としての小説家 (Switch library)

職業としての小説家 (Switch library)

  • 作者: 村上春樹
  • 出版社/メーカー: スイッチパブリッシング
  • 発売日: 2015/09/10
  • メディア: 単行本



読んでいてとってもゾクゾクするような内容でした。やはり村上春樹が評価されるには評価されるに値するものがあるのだ、と心底思いました。そして彼が考え行動してきたことがまた脱帽だなあと思えたりもしました。だからこそ評価され売れているのだなあと。そして私が村上春樹の作品が好きな理由もわかるいくつかの彼のエピソードが載っていました。

ジャズを聞けるお店をやっていたのは知っていたけど、銀行に返すお金がなくうつむいて歩いていたら、銀行に返すお金ときっかり同額のお金が落ちていてそれで支払いできたこと(「僕の人生にはなぜかときどきこういう不思議なことが起こります」「シンクロニシティといえばいいのか、何かの導きと言えばいいのか…」というエピソード)とか、神宮球場でヤクルトの試合をのんびり見ていて選手がヒットを打った時に、「そうだ、僕にも小説が書けるかもしれない」と思ったこと。(「ひとつの啓示のような出来事が起こり」「新鮮な感覚を持ちで」、「わくわくして」最初の「風に歌を聴け」を書いたとのこと)英語のエピファニー(epiphany)~「ある日突然何かが目の前にさっと現れて、それによってものごとの様相が一掃してしまう」体験のこと。彼はこの体験をして作家になりました。そして初めて書いた「風に歌を聴け」が群像の新人賞の候補に挙がったことを知ったとき「そのときにはっと思ったのです。僕は間違いなく群像の新人賞をとるだろうと。そのまま小説家になって、ある程度の成功を収めるだろうと。すごく厚かましいみたいですが、僕はなぜかそう思いました」と。こういう体験は他人事ながら私自身ワクワクです。こんな体験をしたら神様に作家になるよう背中を押されたも同じだなと思いました。こんな体験をしている作家だからこそ、私も好きなんだなと何だか目から鱗でした。

また原稿は何度も何度も読み返してもうこれ以上書きなおしがないと思えるところまで書きなおしをしていること。(当初は英語を書いてから翻訳するように文章を書いたらしく、リズムを大切にしているとのこと)作品一つ一つを出すごとに作家としてのチャレンジを様々に行い(一人称から三人称を取り入れること、日本がバブルで浮かれているころ、アメリカに出て行って自らの作品を広めるための努力をしていたことなど)それなりの努力を積み上げ、まさに精進しているその姿が読み取れました。どんなに調子が良くても悪くても一日に必ず10枚の原稿用紙を書くことを決め、マラソンすることで、ある種の「悪魔祓いをする」こと。コツコツと努力していたら神様が放っておくはずないなあとも思いました。また学生時代からやはりたくさんの本を読んでいて、しかも原書での本もかなり読んでいるようでした。それは作家となり、翻訳することにもつながり、海外生活を送ることにもつながります。何だかすべてがつながっているんだなあと彼の人生を見ていても思いました。

私にとっては「羊をめぐる冒険」が初めて読んだ村上作品でした。そしてそれが今でも一番好きな作品です。そしてこのときこの作品が彼にとっては初めての長編小説でした。集中して書くためにそれまで経営していた店をたたみ、専業作家となり、早寝早起きの生活を送り、体力の維持のためランニングを始めたとのこと。店からの収入のほうが大きかったのに、「もう後戻りできないように橋を焼いてしまった」というその潔い決断。まさに天晴だなあと思います。

また何より大切なこと。「文章を書くときの気持ちよさ、楽しさ」を言っています。楽しくて気持ちいいからやっているという姿勢。今まで文章書くのに苦しんだことがないと言っています。自分の中が満たされ出てくるまで待っていて、自分の奥底まで降りて行っていくらでも書けるというのです。まさに天職なんだなあと思いました。

楽しくて気持ちいいことを大切にし、またシンクロニシティやエピファニ―のような体験も大切にしている。だからこそ、私は彼の作品にこんなにも惹かれるのだなあと納得したのでした。何だかこの本を読んでますます村上春樹が好きになりました。彼の作品に巡り会えて幸せです。

村上ラヂオ3: サラダ好きのライオン (新潮文庫)

村上ラヂオ3: サラダ好きのライオン (新潮文庫)

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/04/28
  • メディア: 文庫

雑誌アンアンに載せたエッセイをまとめた第三弾。気軽にアッと読めてしまいます。肩の力を抜いてリラックスして。たぶん筆者が楽天的な感じなのでこうやってこちらもリラックスしながら読める。それがとっても心地いい。しかも好きな文章なので。

最後の「今日の村上」に書かれた一言が、つぶやきシローのエッセイの最後に「結局僕が言いたかったのは…」を思い出させ、毎回何故か笑えてしまいました。まあ「今日の村上」は全然まとめて言いたいことではないので本文のエッセイの中味と違って当然なのですが、エッセイの中味と「今日の村上」の開きがあればあるほど、このつぶやきシローのエッセイ本体と彼が書く最後の、実は内容を全くまとめていない「結局僕が言いたかったのは~」を思い出させてくれて笑わしてくれました。両方とも能天気な感じが、きっと楽しいのかもしれません。


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旅人の表現術  [本]

旅人の表現術(角幡唯介著)を読みました。

旅人の表現術

旅人の表現術

  • 作者: 角幡 唯介
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2016/06/24
  • メディア: 単行本


「なぜ人は冒険するのか?山に登るのか?」を求めて、角幡がいろんな本を読み、時に人の言葉を引用し角幡自身の考えを述べている本です。またたくさんの人とも対談しています。彼の今までの冒険や今まで出版した本のこともわかるような一冊になっていました。

この本の中には実にたくさんの本の名前が出てきます。

開高健の「夏の闇」「輝ける闇」「日本三文オペラ」「ベトナム戦記」、ジョセフ・キャンベルの「神の力」、アプスレイ・チャーリー=ガラードの「世界最悪の旅」、永田洋子の「十六の墓標」、本多勝一の「アムンセンとスコット」「極限の民族」「ニューギニア高地人「日本人の冒険と[創造的な登山]」、アルフレッド・ランシングの「エンデュアランス号漂流」、コーマック・マッカーシーの「ザ・ロード」、J・シンプソンの「死のクレバス~アンデス氷壁の遭難」、沢木耕太郎の「凍」「一瞬の夏」「深夜特急」、マーク・ローランズの「哲学者とオオカミ~愛、死、幸福についてのレッスン」、大岡昇平の「野火」、ドミニク・ラピエール&ラリー・コリンズの「さもなくば喪服を」、オスカー・ルイスの「貧困の文化」「サンチェスの子供たち」、増田俊也の「七帝柔道記」、青木登美子の「ライカでグッドバイ」、夢枕獏の「神々の山領」、井上靖の「氷壁」、服部文祥の「百年前の山を旅する」、上温湯隆・長尾三郎構成の「サハラに死す」、ジョン・ガイガーの「サードマン 奇跡の生還へ導く人」、ハインリッヒ・ハーラー「の石器時代への旅・秘境ニューギニアを探る」「白い蜘蛛」「セブン・イヤーズ・イン・チベット」、新田次郎の「冬山の掟」、宮城公博の「外道クライマー」、大江健三郎の「日常生活の冒険」、梅棹忠夫の「文明の生態史観」「モゴール族探検記」、三浦しをんの「神去なあなあ日常」、松本清張の「影の地帯」「砂の器」、「黒革の手帳」…

開高健、本多勝一、ジョセフ・キャンベルは角幡唯介の本やブログを読んで影響を受け、既に何冊か読んでます。特に本多勝一の本はすごく好き。読んでないものがあったらまた読みたいなと思いました。現地に行ってその人たちと生活を共にしてのフィールドワーク。何だか私もこんなことがしてみたかったなあと思ったりします。また沢木耕太郎の「深夜特急」はバックパッカーにとってはバイブル的な存在で、私がバックパッカーしてたとき、旅人から何度もこの本の名前が挙がり帰国して読んだ本でもありました。でも自分の旅と比べたら沢木さんの旅はもっと上等な旅だなあと感じたことを思い出しました。私はもっと安い宿に泊まっていてもっと貧乏旅行だったなあと。でも旅を長くしていると興味の対象が観光から人へ、そして自分へと移ってくるというような内容が妙に共感できたなあと。

大岡昇平の「野火」や松本清張の何冊かは高校生のときに読んでますが、「のだめ~」で玉木宏のにわかファンになったとき、テレビドラマの「砂の器」を観たり、井上靖の「氷壁」を観たりして、本じゃなくてもドラマで観れたのは結構良かったなあと思いました。映画「セブン・イヤーズ・イン・チベット」でブラッド・ピット演じたハインリッヒ・ヒラーの存在を知ったり、三浦しをんの小説を読まずとも映画「WOOD JOB~ 神去なあなあ日常」を観てその世界を知ることができたのもやはり映画っていうのはいいもんだと思ったのでした。

角幡唯介が対談している相手は、沢木耕太郎、増田俊也、石川直樹、鈴木涼美、三浦しをん。そして開高健、沢田教一、森田勝、立田實、上温湯隆、宮城公博、梅棹忠夫、植村直己などをこの人たちとあるいは彼一人で話題にしています。

私自身は角幡さんはじめ彼らのようないわゆる冒険をしてませんが、自分にとってはバックパッカーで一人で海外旅行をしてたこと自体が大冒険だったので、人に「何でそんなに何回も、そして長く海外に出かけるの?」を聞かれる度に、すごく自分の生き方自体を否定されたようでイヤだったことを思い出します。私にとっては海外に出かけることこそが、考えてみればこの世で何としてでもしなければならないことだったからです。彼らが冒険に出かけるのもまさにそうであったろうし、その人の生き様そのものだし、行きたいから行くだけであって、角幡唯介が冒険に出かけるのも、そして今までたくさんの人が出かけていくのも、とっても私自身としてはわかる気がします。人に何といわれようがやりたいことはやりたいのですから。

角幡唯介がGPSなどの文明の利器を使わずに冒険しようとしているのも、昔の人に比べたら自分の冒険などは全く簡単になってしまっていると思っているから、せめてそういったものをなるべく使わず冒険しようというのも何だか理解できます。私自身は1991年に自分としては大冒険と思えたチベット旅行でしたが(今では時効だから言いますが、個人旅行が禁止されていた時中国人に化けてもう一人の旅行者と一緒にチベット入りし当時はドキドキでした。でも私は当時そうまでしてチベットに行きたかったのです)それでも川口慧海や西川一三などと比べたら私の旅なんか全く冒険などといえないなあと思ったのを思い出しました。昔からしたら今はどんどん簡単にそこへ行けるし、冒険の余地も少なくなっているのだと思います。でも人はやりたいと思ったらどんなことでもやりたいのだ、究極のところはそこに尽きると思いました。それが生きているということの証だからです。

角幡さんの冒険をこれからも応援したいと思います。でも角幡さん、死なないでください。


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よしもとばななの本 [本]

よしもとばなな(吉本ばなな)の本を読みました。(吉本ばななからよしもとばななに、そしてまた吉本ばななに改名しているのでちょっとこんがらがる!)

ジョンとばななの幸せって何ですか

ジョンとばななの幸せって何ですか

  • 作者: ジョン・キム
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2016/01/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

ジョンって誰?と思ったら、ジョン・キムという韓国人で、19歳で日本に国費留学しその後ハーバード大など世界の大学を渡り歩き、組織に縛られない「ノマドワーカー」の代表的存在として知られる人、とありました。また「JD'S SALON LIFE IS ART」を主宰。本も執筆しているらしいです。

本はかなり大きな字で印刷してありまた薄い本なのであっという間に読め、結構共感するところも多かったのですが、メインの二人の対談のまえがきによしもとばななが、あとがきにジョン・キムが書いていて、特にあとがきのジョン・キムの言葉に忘れていた旅の思い出がムクムクと思い出されました。

このジョン・キムは、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スペイン、イタリア、オーストラリアと異なる国で生活をして、「生まれた場所にずっと暮らし、一つの役だけをこなし続ける生き方も確かにある。…しかし人生は短い。自らいろんな役回りを求め、何をやっても生きていけるような力を身につけるために、積極的に居場所を変えてみることも素敵なことだと思います」といい、実際にその身をもって経験している人でした。

中国の夏河(シャーファー)という場所にタール寺というチベット寺院があり、そこで会ったアメリカ人が私は今でも忘れられません。その人もまたこのジョン・キムのような人で、いろんな国に住んではあちこち旅行している人でした。私はその時、いろんな国に住むのもありなんだなあとパッと未来が開けた気分になりました。それから25,6年も経ち実際の私はいろんな国に住むことは結局はしませんでしたが(いろんな国に旅行をたくさんするだけで気持ちが収まってしまったのかもしれません)、そういえばいろんな国に住むなんてなんて素敵なことだろうと胸がときめいたことを思い出したのです。こういう生きかたも当時の私にとっては選択肢の一つだったと懐かしく思いました。

またジョン・キムの言葉はとても胸を打ちました。

「ばななさんと出会って学んだこと、…私にとってのいちばんの学びは『人間、生きているだけで十分である』ということでした。あなたを大切に思う人たちは、あなたが生きていてくれるだけで喜びや感謝を感じる人たちです。だから無理して人生の目的を探す必要はありません。将来の目標が見えないからといって落ち込む必要もまたありません。ただ、いまは生きていてさえくれればよいのです。そうすればそのうち、生きる目的も目指す目標も浮かび上がってきます。いまを生きる、それに集中するだけで十分なのです。……あなたを大切に思う人たちのために生きることは、自分を大切にしながら生きることを意味します。今の自分は、大切にしてきてくれた人たちの愛によって作られた結晶です。だから自分を大切にしながら生きていくことこそが、そうした大切な人たちへの恩返しにもなるのです」

少しこのキム・ジョンの本も読んでみようかなと思いました。

イヤシノウタ

イヤシノウタ

  • 作者: 吉本 ばなな
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/04/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

忌野清志郎のイヤシノウタという歌詞が載っていました。この本はエッセイ集。本当に短いエッセイがたくさん載っていました。よしもとばななが結婚して子供も生まれて、その子供ももう12歳!だなんて月日が流れるのは本当に早いと驚きです。でもよしもとばななの文章は何もイヤシノウタと名付けなくてもどんなエッセイでも小説でも私にとっては癒しとなっていて、それはいつでも変わらないと思いました。いつもいつも優しい気持ちになって生きてて良かったなあと思える彼女の文章がやはり大好きなのだ、と思うのでした。

人生の旅をゆく 2 (幻冬舎文庫)

人生の旅をゆく 2 (幻冬舎文庫)

  • 作者: よしもと ばなな
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2016/02/09
  • メディア: 文庫

愛犬の死、東日本大震災、父親の死、忌野清志郎や河合先生のことなど、身の回りに起きた様々なこと、昔のことを思い出して描くエッセイ。あちこちの雑誌などから寄せ集めたエッセイらしいのですが、ものの考え方とかが彼女ととっても似ているところがあり、だからずっと読み続けたいんだなあと再認識しました。彼女にとってもここ何年かは大変な時期だったらしく、大変なのはこの年代はみんな同じなのかなあと妙に合点しています。

サーカスナイト

サーカスナイト

  • 作者: よしもと ばなな
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2015/01/21
  • メディア: 単行本

バリに育った主人公のさやか。彼女はガンで死ぬと分かっている人の子供を産み、今は夫を送り子供を抱えて夫の両親の家で二世帯で住んでいる。そこに手紙が。庭の骨の秘密、元恋人との再会、さやかの動かなくなっている親指の秘密、その癒し、再びのバリへ、といつものばななワールドが展開。優しい気持ちになれるのは勿論、所々でふと涙があふれ、凝り固まった自分の心の奥底まで何だか癒されている気分になりました。バリ島にも私自身また行きたいなあと思いました。


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健さん [ドキュメンタリー]

一ツ橋ホールで「健さん」を観てきました。

ポスター画像

映画公式サイト:http://respect-film.co.jp/kensan/

2014年に亡くなった高倉健のドキュメンタリー映画です。高倉健の人物像に迫るエピソードを披露してくれるのはたくさんの人たち。40年来の付き人、実の妹、「ブラックレイン」で共演したマイケル・ダグラス、「幸せの黄色いハンカチ」で監督した山田洋次、任侠映画で何度も切られた八名信夫、「新・網走番外地」シリーズや「駅/STATION」「鉄道員(ぽっぽや)」の監督の降旗康男、紆余曲折してこの秋やっと公開映画となる「沈黙」(遠藤周作原作)のオファーを高倉健にして丁重に断られたと語る監督のマーティン・スコセッシ。またスコセッシ監督の映画「レイジングブル」を高倉健本人が大好きで何度も観ていたというエピソードもありました。そして結婚式の時のエピソードをそれぞれが語る中野良子、そして梅宮辰夫。他にも、ジョン・ウー監督、ポール・シュレイダー(脚本家)、ヤン・デポン、韓国の俳優ユ・オソン、映画館支配人、カメラマンなどなど。

たくさんの写真やたくさんの証言、大まかな人生を追い、時には軽快な音楽、しんみりとする音楽を使い分け、笑わせてくれるエピソードも添え、テンポもまちまちで飽きさせない工夫をしている映画でした。映画の最後には出演者の人たちから、映画のタイトルになっている「健さん」という呼びかけを集め、ちょっとした感動を呼びます。その証拠に映画を観終わった観客からは拍手が起こっていました。

高倉健の身に離婚、母の死が同時期に重なり、「どうしてこんなにも不幸が襲うのだろう?」と素朴に思ってあるお坊さんに尋ねたときに、「たとえ映画の中であっても人を殺めているのだから、それは現実世界と変わらないことなのです」といったようなことを言われ滝行を自ら課すようになったというエピソードもありました。任侠映画から足を洗い、「八甲田山」や「黄色い幸せのハンカチ」などに出演してたくさんの賞をもらっていきます…。

ある人は、クリントイーストウッドが演じたちょっとアウトローでありながらもしっかり道筋だけは通すといったガンマンと高倉健演じるやくざは共通していたと語り、またあるものは高倉健はフランクシナトラのような生き方だった、またあるものはトムクルーズが高倉健を意識して演じた…など語ります。

「漫然と生きる男ではなく、一生懸命な男を演じたい」といった高倉健自らの言葉も紹介されます。

「八甲田山」「幸せの黄色いハンカチ」「単騎、千里を走る」くらいしか健さんの映画は観たことがありませんが、渋くてものをあまり語らない昔の男の人というイメージはそのまま壊れることなく、世界中の人がリスペクトして止まないその意味がとってもわかる映画になっていました。健さん好きにはたまらない映画だと思います。特に健さん好きというわけではない私でも、観れて良かった映画です。


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